2011年4月28日

ミニミニは風に乗って

幼い頃から気の強い癖に、癖にというかだからこそなのかも知れませんがとにかく臆病な子でして、ごろごろどしゃーんと轟く雷やばたばたと屋根を打つ大雨や、家を揺らす程ひゅうごうと吹き付ける風の音がすると、大きな丸い目を見開いてパニックを起こして走り回りだします。そんな時、飼い主である私はどうにか彼女を捕まえ膝に乗せ、落ち着かせようと狭い額をかりかりとかいてやり、耳の後ろから顎の下、そして背中や腹を大きく撫でてやりますと、まるで人間のような大きな溜息をひとつついてから、やっと目を瞑って香箱を作ります。
16年、私の膝枕は彼女のものでした。
自分の為に生きる欲は無く、依存出来る誰かもおらず、しかし命を絶つ勇気も無いまま惰性で生きていた私が、ちびで痩せっぽちなのにプライドだけは一丁前の彼女と暮らし始め、人生に対する多少の執着を貰ってから16年。キッチンに立つ飼い主の背中を駆け上がり肩の上でメニューのチェックをしたり、寒いからと床に入った飼い主の首の上で丸くなり息苦しくさせ起こしたり、不細工に育つだろうと楽しみにしていた飼い主の期待を裏切って結構な美猫になったり、飼い主の好物であるイカの燻製をその手から叩き落したり、夜に脱走し大捜索させお隣の納戸の隅で怖くて固まっていたところを発見させ飼い主が楽しみにしていたビューティフルライフ最終回を見逃す破目にさせたり、お腹にビー球大の腫瘍を作って飼い主を冷や冷やさせたり、まだまだ山程ありますが、そんな16年でした。
夕方、日も伸びてまだまだ空の明るい頃、強い風は古い家に容赦なくぶち当たってはひゅうごうと唸っていましたが、彼女は珍しくとても静かでした。パニックを起こすでもなく走り回るでもなく、古い家はこれだから困るとでも言っているようなうにゃうにゃという文句を言うでもなく膝の上で大人しくしているのですが、幾ら撫でられても喉を鳴らすでもなく、伸ばしたままの腕は硬くいつものように閉じて開いてを繰り返す仕草をすることもなく、その柔らかさに飼い主が顔を埋めると迷惑そうに渋い顔になる腹は二度と上下することはありません。食事を摂らず子猫用のミルクも水も吐き出し、よたよたと歩く様から明らかにその日は近いと感じた私がもう治療はせずこの家で穏やかに終わらせようと決意してから三日目、もしかしたら彼女は延命を望んでいたかもしれません。だからこの結末は、私のエゴが引き起こしたものです。何が幸いなのか今まで幸せだったのか、猫の言葉を解せない飼い主はエゴで動くしかありませんでした。
ちっぽけな人間と更にちっぽけな猫のことなんざ眼中無いと主張するように、相も変わらず風がくるくると暴れる中、いつもならそうすると怒る彼女をここぞとばかりにぎゅうと抱きしめます。嗚呼軽い、固い、冷たい。決して良い飼い主では無かった私には、それが例え憶測だとしても、彼女が幸せだったとは口に出来ませんが。
数時間経ち風も止んだ静かな夜を迎え、思います。
少なくともこの16年、私は彼女と暮らせてとても幸せでした。

2010年7月22日

not bad

気紛れに花を作ったら手前味噌でしょうが案外気に入ってしまいまして、こっそりまた店を始め、そこに置いてみました。
売れたらラッキー程度の意気込みです。
嘘ですLOGOSのカード代にしたい気まんまかまんです。
妄想から生まれたオリジナルですので少々お高いL$300均一、ハメ次郎のようにお客のうっかりに期待した値段設定です。
さて出来上がったただの箱の店も完成したさあ商品情報を出そうかと思ったらFlickrのパス忘れてるっていう体たらくでしたので、どうせだから一緒にしちゃえってことで今後もTwitterの方で細々とやります。


話変わりまして。

かっこいいことを書いてやろうと思ったのですがね、物書き失格、大した台詞が思い浮かばないのですよ。

フェイドアウトしていった人も居ますし、とても辛いことばかりで立ち去るしかなかった人も居ました。
それでも時折Xiaoさんと向かい合いながら、嗚呼あの人は今頃元気でやっているのかねえそうだといいねえと語り合うこともしばしば御座います。
誰かの幸せを願うことが出来るということは、誰かに幸せにして貰えたからだと思うのです。
そしてそう思えるということは、例え僅かであろうと誰かを幸せに出来ているってことなのです。
根拠?脈絡?そんなものはありゃしませんよ。

とりあえず。

しっぽの生えた女は角の生えた男と、以前ほど活発に飛び回ってはおりませんが、それでも互いに可能な日はログインして面白おかしく過ごしています。
出会った友が幸せであると信じ、更なる幸あれと祈りながら。

暖かい言葉をありがとう、友人よ。


かっこつけたシメ方しようとしたんですがね、ガラじゃない台詞に首筋がぞわぞわしましたよ。

2010年2月18日

達成感から立ち上がれ


駆け出しライターはクライアントや相方さんに迷惑をかけつつもようやっと仕事を終わらせ、かつ次の仕事も頂戴し、何だかあまりにも順風満帆で、いつも逃げては何もかも中途半端で完走という言葉から縁遠い人生を送ってきた私故に、逆に戸惑いも無きにしも非ず。
嗚呼終わったのだという感覚にはとても満足しておりますが、その後に続く脱力感に些か困り果てております。
何せもう色々やる気が起きず、きっとまもなく届くであろう次の仕事への意気込みなんざ全くもって無い始末でどうしたものやら。
ですから少しリハビリも兼ねて、今回の仕事でふと気付いたことでも書き記してみるとします。


さて本日載せた動画は、決して交わらないような二組のアーティストがコラボレーションした曲でして、和と洋が上手く引き立てあってる佳作であります。
そして私のSLにおけるちょっとした思い出の曲でもあり、その思い出があったからこそ今物書きとして生きるには充分過ぎる分稼げるようになれたのです。
ただそれは残念な事にもう思い出にしかなれず、復活やら継続やら、とにかく再び新しい動きを成すことは無いでしょう。

原因は何だったのか、ふと考えることがあります。

それぞれの立場からすれば言い分もありますでしょう誰も悪くないとも言えましょう、それでも私の結論は後悔に尽きるのです。
それまでの短編と違い映像にしたら30分(だったような)は文章にしたら結構長いもので、本来用意されたプロットを元に書き起こすという話だったのがいつしか内容の全てを任され、それは素人にはとても重い責であり、かといって断ることも出来ないと進言することもせずに逃げ続けました。
結局そのままグループごと自然消滅。

ぶっちゃけてしまえば、Eventure消滅は私が悪いと思ってます。

契約上私は著作権を持たないので具体的なことは言えないのですが、今回書いたお話の一部に、あるグループがお互い気遣い過ぎてすれ違ったまま別れてしまいそうなところを、感情的に怒りをぶちまけることで分かり合い、関係が修復するという箇所があります。
私は物書きとして想像力に欠ける部分がありまして、何か書く時はそれまでの経験や思い出なんかを下敷きにして挑むのですが、今回のこれはまさしくその時の後悔と言えましょう。
みっともなかろうが負け犬だろうが、出来ねえよこんなん無理だよ素人に何やらせるんだよと暴れておけば、もしかしたらああ言ったあやふやな終わり方にはならなかったような気がして仕方ありません。

ぼんフェスの準備中、時折みっちゃんが声をかけ、躍らされたりポーズをとらされたりしました。
きっと何か記録映像でも撮っているのだろうと、その時は誰もが思っていたことでしょう。

ねえだからさ、皆あの時感動しちゃったでしょ?イベントのシメで発表された動画が、この曲をBGMに私たちが動きまわっていたものをカッコ良く編集したものだったと知った時。
女子メンバーなんて特に終わっても暫く会場から動かずに見ていたでしょ、あれ絶対中の人うるうるしてたよね?少なくとも私はそうだったよ。

ごめんなさい、逃げてごめんなさい。

失ったものを取り戻そうとは毛頭考えてはおりませんが、同じ轍は踏まないと決めており、正直無意識ではありましたがそんな気持ちから仕事に盛り込んだのだろうと、今読み返してみれば思えます。
若いおにゃのこ向けゲームのシナリオですから、恋愛要素の無い部分は読み飛ばされてしまうでしょう。
それでももし誰かがそれを読み、噛みあわなくなった歯車は崩れるだけなのだと仲良しだからって喧嘩を怖がっていたらいけないのだと、思ってくれたら物書き冥利に尽きます。

みっともない生き様ですが、それで稼げる私はきっと幸せ者ですね。

2010年1月17日

前略、雲の上より

ここ最近沈静化していたはずの隣人トラブルが再び再燃しておりまして、Hugeプリムに下品な仕草をする骸骨のテクスチャを貼られてこちらに向けられたりしておりました。
以前は話し合いでどうにかしようと会話を試みたのですが彼の英語は非常に汚く、こちらは翻訳サイトとHUDを使用してるので出来れば簡潔に話して欲しいとお願いしても跳ね除けられ、しまいには

俺は天才クリエイターなので、お前にObjectを送る
お前は大金を俺に支払うことになるだろう

という内容の頭の悪い脅迫を受けましたので(awesome creatorって自分のこと言ってました)、お互い気持ち良く過ごせるような交流は断念し、以後何かあればReport Abuseをマメに送るようにしておりました。
とは言っても可愛いところもありまして、まず先ほどの脅迫なんて、揉めてる相手から何の連絡も無しで送り付けられた物を受け取ると思ってるのかと驚きましたし、被害妄想かも知れませんが私が相方さんから教わってスカルプに手を出したのを知ったらしく明らかにフリーで配られているパーツを組み合わせて作った動物をL$5000で販売したり、ええ勿論皮肉で言ってます。
で、年明け前後から彼はまた色々やり始めまして、相方さんと考えるに、

彼は悪気は無いのだ
ただ人と自分の価値観が違うということを想像出来ないのだ

という結論に至りまして、穏やかに過ごしたいだけの我らは上空に移動することにしました。

どうせなら自分で作りましょうと、仕事の合間にちまちまと準備しておりまして、本日ようやっと完成。
画像は、一番お気に入りの、窓から覗いた景色です。
今回家を新築したことで、以前から憧れていた1プリム梯子を作ることも成功しましたし、何でもスカルプでやりゃいいってもんでも無いことも学びましたし、照明の効果ってでかいことも知りましたし、とにかく色々勉強になりました。
それもこれも、画像にもありますWinter Choice!参加店+mocha+さん提供の景品でありますこのベッドからイメージを膨らませてアイデアを練ることが出来たからです。
素敵な作品は想像力を膨らませ創造力を刺激するのだなあと、今更ながら考えるアインはSL生活4年目に入りました。
ありがたやありがたや。

あと、敢えて幾つかの家具は自作せず、色々なお店を見て購入してみました。
時間を忘れて一人でおままごと出来るキッチンを見付けまして、わかったことはやっぱりGorの人のこだわりってすげえってこと。
しかもスカルプの特性を生かしたえーらいエコプリムで、遊びながらその仕組みを見てまた沢山のことを教わっております。

2009年12月31日

小さな泡沫、今年を振り返る

のんべんだらりと生きることは決して悪いことでは無く、むしろ心穏やかに過ごす仮想世界は、私にしても彼にしても、思い通りにならない現実に対する憤りを癒すだけのものとなりました。
時折自嘲気味に自らを『リア充』と呼んだりする程度には仕事にも恵まれ、しかしその責任感は特にXiaoさんの中の人を押し潰し、遠距離であるが故辛い時に傍に居ることが叶わないもどかしさも、仮想世界が補った部分は少なくはありません。
その分人付き合いは大分疎かになってしまいましたがね。
身勝手な言い草が許されるのなら、日頃の接触が無くとも日々の幸せを祈り、何かの機会に会えば何のわだかまりも無いような素振りでやあ久し振りと言えるのが友人だと思っておりまして、私が好きな方達もきっとこれに応えるだけの器をお持ちだろうと考えていたりします。

二人だけであの広い世界で何をしていたかと申せば、買物したり散歩をしたり、その中で見つけた素晴らしい場所で語り合ったり、これは主に私からばかりでしたが愚痴を言ったり、これと言って特別なことは何もしておりません。
強いて上げるならば、たまにそれぞれ性別を逆転させるようになったことでしょうか。
目標は『日本人にナンパされること』とし、試行錯誤は今でも続いておりますが、幸いなことに私は一足お先にアクティブレイディにお声を掛けて頂きました。
Xiao子さんはその魅力に気付いてくれる殿方には未だに出会えないようです。
正直そこらの女子よりいけてるんですがねえ、やっぱり中の人が身長57メートル体重550トンだというのが空気に滲み出てるのでしょうか超電磁ロボ。
ちなみに実物は、手を繋ぐとどうしてもバルスのポーズになるくらいの中肉大背な色男です。

来年も変わること無く、仮想世界は現実世界のひとつというスタンスのまま、穏やかに暮らしていきたいと思います。


私事ではありますが喪中ですのであけましてもおめでたくは無いのですが、折角の仮想世界ですので多少は正月気分に浸ろうかと、着物を新調致しました。
現実の方ではとても残念な体型のEinの中の人、正直市販のドレス等着てもその醜さに心が折れるばかりでして、その為典型的日本人スタイルでこそ栄える和装姿でお呼ばれ先に出向くことが多いです。
で、上から目線で大変申し訳無いのですが、SecondLifeの中で人気の女性用着物の多くが、私のように数度本物に袖を通した経験のある者からしたら多くの不満を感じるものではないかと思います。
フレキシプリムが一枚ぺろんとぶら下がる袖、下過ぎる帯の位置、エトセトラ。
私が今回手に入れました着物は正統派な形ではありませんが、本物志向が故に陳腐になりがちなそういう部分を上手くアレンジしており、全体のシルエットが非常に綺麗です。

私はこの格好で、相方さんは愛用のKTGの着物で、笑ってはいけないホテルマンを見ながら年を越す予定です。
次のデートまで大分日がありますので、その後こちらでも初詣をしようかどうしようか考えつつ。


母は癌で死にました。
姪がもうすぐ子供を産みます。
世界はひとつ瞬きをするだけでその様を一変させ、ともすれば置き去りにされるほどの速さで。
かつ消えかつ結びて、嗚呼方丈記は真理です。

来年も訪れるであろうその変化が、皆さんにとって幸あるものでありますように。


2009年大晦日、ご挨拶に代えて Einsatz